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「AIおまかせ投資」はリスク大!?

米証券取引委員会がついに警鐘[インチキはインチキなのだ!]
(出典:FinancialStability Oversight Council (FSOC) 2023 Annual Report in the United States)

 

「リスクなし」なんてあるわけがない

日本の有力銀行も、「ロボアドバイザー」などと称して、人工知能(ロボット)によるアドバイスによって、
まったくリスクなしの投資が可能になったかのような宣伝を始めた。

Alの本場、アメリカでは、まだ大手は控え目だが、昨年から中小の証券会社が、「投資はAlにまかせろ」といった趣旨のキャッチ・ コピーを盛んに振りまくようになってきた。
その結果、取り返しがつかない重大な事態をまねくのを怖れてか、米証券取引委員会(SEC)の委員長のゲイリー・ ゲンスラーが、母校のイエール大学での講演会という場を借りて、私見だと断りつつ、Alに対する規制について、証券委員会の方針を明らかにした。つい最近の2月13日のことだ。

「インチキはインチキなのだ。……最後はすべてユーザーの責任だ。この点を明確にしておきたい」 このように委員長は講演をしめくくった。

米国証券法には「人工知能の利用には責任(ライアビリティ)を伴う」という条項を追加するように、すでに2023年に議会で修正法案が起草されている(まだ法律にはなっていない)。それを受け証券取引委員会は、いつでも政策判断が下せるように、人工知能の利用状態の調査を続けてきた。

そして2023年12月には、財務省を始めとして、連銀、消費者金融保護委員会など、関係する9機関とともに、金融安定監督諮問会議(FSOC)を設置し、2023年の年次報告のなかでとくに一章をさいて、金融業界のAl利用に対する監視の強化を訴えた。
Alのどのような面を監視するつもりなのだろうか。

 

「ロボアドバイザー」のメリットとデメリット

講演のなかでゲンスラ委員長は、Al   をわかりやすく、つぎのように定義した。
「数学 ・ デタ・ 計算力を使って、パタンを導きだし、予測すること」

【メリット】
規模を大きくすれば、経済全般にわたって効率を高められ、金融に応用すれば、含まれる範囲が広がり、利用者の経験を豊かにする。

【デメリット】
①しばしばAl が出す結果が説明不可能なこと。
②データもアルゴリズムも過去のものに依存するため、偏り(バイアス)を避けられないこと。
③Alの答えがすべて正しいとは限らないこと。

Alの間違いを「幻覚(ハルシネション)」、それを起こす不適切なデタやアルゴリズムを「毒(ポイズン)」というように呼び、ゲンスラー委員長は上記デメリットに対して、明確に否定的な評価を下している。
その結果として現状のまま野放しにまかせれば、「システム・  リスク(全金融体系への信用途絶の拡散)」を招きかねないと、委員長は警告する。

すでに事実上Alが1つのプラットフォーム(応用プログラムの基盤、ChatGPT)による独占状態にあり、その利用を促進するように、3つのクラウド(アマゾン、マイクロソフト、グーグルの3社による巨大計算ネットワーク)がサービスと価格の面で競争している。このような状況認識を基に、証券取引委員会は「システム・リスク」を警戒するのだ。

世界中の金融機関が唯一のプラットフォームに依存するとなれば、全世界の投資家がこぞって唯一の方向に向かって走りやすくなる。極端かもしれないが、理屈ではそうだ。

株価の乱降下が激しくなり、暴騰や暴落を防ぐため、取引の一時中止、ストップ髙、ストップ安に見舞われやすくなる。そう思っていなければならない。

 

悩ましいのはインチキの横行

経済の実勢以上に株価が高騰した結果、反動として株の現金化が喚起されるが、現金が不足して(流動性が欠けるため)、支払い不履行(デフォルト)が広がり、市場が信用途絶の状態、市場崩壊(クラッシュ)に落ち込む。それを防ぐため、さまざまな対策が業界に求められてきた。

だが、証券取引委員会を含め当局は、本心では防ぎきれないと考えている。本気で止めにかかれば、金融資本主義の息の根を止めてしまうだろう。だから、ざっくばらんなところを言えば、救済資金の規模との兼ね合いで、いつ市場救済に乗り出すかのタイミングを見計らうのが、肝心な委員会の役目 のひとつだとぐらいにしか思っていない。

委員会がもっとも腐心しているのは、インチキの防止と摘発に違いない。だから、講演でゲンスラー委員長は、その点をしきりに強調したのだ。インチキ(フロード・不正取引行為)が横行して、株や証券や金融商品などが信用を失い、市場が成り立たなくなるのは、それだけは絶対に避けねばならな いと、金融資本主義の番人として覚悟を決めているわけだ。

実は、その点で、Alの金融への応用はデリケートな問題をはらむ。具体的に説明すると、いわゆる「フロント ・ ランニング(先回り売買)」がその一例だ。大手の投資機関の取引の意向を察知し、仲介業者が客の売買を成立させる前に、先回りして、リスクなしで確実に利益が得られる条件で売買してしまう。これは客に対する忠実義務に違反する。

なぜAlではそれが生じやすいのか? 客が取引でアドバイスをAlに求めると、Alは直ちにそれを学習して過去のデータと一緒にして、その上で処理して客に答えを返す。その際に、一瞬と言え、より早く仲介業者はAlの答えを得て、売買の先回り実行が可能になるからだろう。現在の取引ネットワークの技術によれば、それはい とも簡単に可能だ。

取引委員会がとくに監視したいというのは、「フロント ・ランニング」の有無ではないかと思われるが、それにつ いて可能とも不可能とも、詳しくは言及していない。それを不正行為として摘発するのは容易ではない。何しろAlの答えの出し方の詳細は不明、ブラック・ ボックスだからだ。この点はゲンスラー委員長自身も認めている。

とても「ロボアドバイザー」がリスクなしとは言えない。広告に目をこらすと、「有力銀行には責任がない」とやや小さい字で注意が添えられている。

 

 

 

 

 

 

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