経済変動とその中で見る投資の機会
米国株の「調整」はまだ続く公算
JPモルガンのコラノビッチ氏、米国株の「調整」はまだ続く公算2024年4月23日 6:41 JSTBloomberg
- ドル上昇と債券利回りはリスクの高まりを反映
- ディフェンシブ(注1)な姿勢維持を-日本の消費関連株の買い検討すべき時
JPモルガン・チェースのマルコ・コラノビッチ氏は、過去3週間の米国株安は下げ相場の始まりだったと述べ、米国債利回り上昇やドル高、原油価格の高騰などマクロ経済リスクの高まりに伴い下げが深まる可能性が高いとの見方を示した。
チーフ・マーケットストラテジストを務めるコラノビッチ氏は、今週発表される米企業決算が一時的に相場を落ち着かせる可能性もあるが、難局を脱したわけではないと指摘した。
株式のバリュエーションを巡る無頓着さと、高いインフレの持続、米利下げ観測の後退、過度に楽観的な企業利益見通しが下振れリスクを高める要因だとコラノビッチ氏は分析した。
同氏は22日付の顧客向けリポートでS&P500種株価指数が先週、3月28日の終値ベースの高値を5%余り下回って終了したことを受け「調整はまだ続きそうだ」と予想。「市場の集中度は非常に高く、ポジショニングは拡大している。これらは通常は危険信号だ」と指摘した。市場の調整とは一般的に10%以上の下落を指す。
(注1)ディフェンシブ=経済の景気変動に関わらず安定した業績を維持しやすい企業の株式(ディフェンシブ銘柄)
JPモルガンのコラノビッチ氏と同氏のチームは今年、ウォール街で相場動向に逆張りをする少数の弱気派グループの一角。
同業他社の大半が米国株見通しを引き上げる一方で、JPモルガンは株式とリスク資産全般を嫌がる姿勢を崩しておらず、S&P500種の年末目標をウォール街の大手銀行で最低の4200としている。これは22日から年末までに約16%下落することを意味する。
これとは別にコラノビッチ氏は同日、日本の消費関連株の買いを検討すべき時期だと顧客に伝え、実質賃金の上昇が日本の個人消費を刺激し消費関連株を押し上げるとの見方を示した。
マクロ経済リスク
JPMorgan Chase & Co. のチーフマーケットストラテジストは、米国株式の最近の下落は、投資家やアナリストの間で懸念を引き起こしています the recent slide in US equities is just the beginning of a selloff that could deepen.
さらに深刻化する株式資産売却の始まりに過ぎないと考えています。
いくつかのマクロ経済リスク(注1)がこの懸念の根源となっています。
(注1)=リスク (英: risk)とは、
将来のいずれかの時において何か悪い事象が起こる可能性をいうこの概念をベースとして、金融学や工学、あるいはリスクマネジメントの理論の中で派生的にバリエーションのある定義づけがなされている。
例えば、ファイナンスの分野においては、「悪い事象が起こる可能性」だけではなく「良い事象が起こる可能性」もリスクに含まれる。
- 国債利回りの上昇: 国債利回りの上昇は、株式に対するリスクです。利回りが上昇すると、固定金利投資が株式に比べて魅力的になる可能性があります
- 強いドル: 強い米ドルは、多国籍企業の利益に悪影響を及ぼす可能性があります。米ドルが強くなると、外国の購買者にとって彼らの輸出がより高価になります
- 高い原油価格: 高い原油価格は、消費者支出と企業の収益に影響を及ぼし、株式市場に圧力をかける可能性があります
- 株式評価: 高い株式評価に対する安心感は懸念材料です。評価が楽観的すぎる場合、修正がより起こりやすくなります
- インフレーション: 持続的なインフレーションは、金利の上昇を引き起こし、株価に影響を及ぼす可能性があります
- FRBの利上げ期待: 近い将来の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ期待の低下は、投資家の感情に影響を与えるかもしれません
リスク資産を長期的なボラティリティと商品のポジションでヘッジする防御的なアプローチを推奨しています(金を除く)。モデルポートフォリオでは、2024年末までにS&P 500が約16%下落すると予想されています。
投資判断を行う際には、これらの要因を考慮することが重要です。
これらの要因を注視することは重要ですが、市場の動きは多くの変数に影響されることを忘れないでください。
投資家は情報を収集し、リスクを緩和するためにポートフォリオを分散させることを検討すべきです。
下落リスクにいかにして対応できるか?-ドルコスト平均法を5つの相場ケースを想定してシミュレーション-
一括投資、定数投資、定額投資(ドルコスト平均法)の違いを比較しています。
ドルコスト平均法は、定期的に一定額を投資する方法で、相場の変動に対してリスクを分散することができます。価格の上下に左右されずに資産を積み立てることが可能
■シミュレーションの設定は以下のとおりです。
- 商品は投資信託
- 投資タイミングは6回
- 購入手数料、インカムゲイン、税金は無視
- 一括投資は1回目の投資タイミングに60万円を購入(計1回)
- 定数投資は毎回100口ずつを購入(計6回)
- 定額投資は毎回10万円ずつ購入(計6回)l最終6回目時点で売却
■5つの相場ケースは以下を想定
- 下落と上昇を繰り返す相場
- 大きく下落してから上昇する相場
- 大きく上昇してから下落する相場
- 右肩上がりに上昇する相場
- 右肩下がりに下落する相場
①下落と上昇を繰り返す相場:ケース1では下落と上昇をくり返して、投資初期の価格1.5倍に落ちつきます。ドルコスト平均法が得意とする相場です。
投資信託の価格が1000円のときに投資を始め、下落と上昇をくり返して最終価格は1500円に落ちついています。各投資法の成績は以下のとおり。購入口数X最終価格-合計投資額=リターン
【一括投資】
評価額90万円/損益+30万円
【定数投資】
評価額90万円/損益+20万円
【定額投資(ドルコスト平均法)】
評価額102.3万円/損益+42.3万円
すべての投資法がプラスリターンとなっていますが、ドルコスト平均法が最も高いリターンを上げています。平均購入単価もドルコスト平均法がいちばん低いので当たり前の結果です。
一括投資は4回目時点で売却しておけば元本2倍となりましたが、5回目時点で売却してしまえば元本半分になっていました。
②大きく下落してから上昇する相場: ケース2では大きく下落してから上昇して、投資初期の価格半分に落ちつきます。ドルコスト平均法が大得意とする相場です。
投資信託の価格が2000円のときに投資を始め、200円まで大きく下落してから1000円まで上昇していきます。
購入口数X最終価格-合計投資額=リターン
各投資法の成績は以下のとおり
【一括投資】
評価額30万円/損益-30万円
【定数投資】
評価額60万円/損益+8万円
【定額投資(ドルコスト平均法)】
評価額115万円/損益+55万円
一括投資は高値をつかんでしまっているので、どの時点(2~6回目)で売却してもマイナスリターンとなります。一括投資の場合は3回目時点で売却していたら、元本が10分の1になるので投資初心者は注意が必要です。
そして、ドルコスト平均法は高いリターンを上げています。
ドルコスト平均法は株価が大きく下落したときに投資信託を安く購入しているので、価格が戻ったときのリターンは大きくなるのです。
③大きく上昇してから下落する相場:ケース3では大きく上昇してから下落して、投資初期の価格に戻ります。ドルコスト平均法が苦手とする相場です
投資信託の価格が500円のときに投資を始め、2000円まで大きく上昇してから500円まで下落していきます。
購入口数X最終価格-合計投資額=リターン
各投資法の成績は以下のとおり。
【一括投資】
評価額60万円/損益0円
【定数投資】
評価額30万円/損益-40万円
【定額投資(ドルコスト平均法)】
評価額34.1万円/損益-25.9万円
一括投資以外はマイナスリターンです。
ドルコスト平均法は高値でも関係なく購入していくので平均購入単価が高くなってしまい、投資の出口に下落が訪れたときのダメージは大きいです。
④右肩上がりに上昇する相場:ケース4では右肩上がりに上昇して、投資初期の価格6倍まで上がっていきます。一括投資が大得意とする相場です
投資信託の価格が500円のときに投資を始め、3000円まで右肩上がりに上昇していきます。
各投資法の成績は以下のとおり。
【一括投資】
評価額360万円/損益+300万円
【定数投資】
評価額180万円/損益+75万円
【定額投資(ドルコスト平均法)】
評価額146.7万円/損益+86.7万円
一括投資は右肩上がりの相場において、「安値で買い、高値で売る」を見事に実現して最高のリターンをたたき出します。
ドルコスト平均法は価格の上昇にあわせて高値をつかんでいますが、右肩上がり相場のおかげでリターンはプラスです。
ただ、右肩上がりの相場ではドルコスト平均法の機会損失デメリットが利益を減らします。
⑤右肩下がりに下落する相場:ケース5では右肩下がりに下落して、投資初期の10分の1に落ちつきます。すべての投資法で大きな損失を抱える相場です。
投資信託の価格が2000円のときに投資を始め、200円まで右肩下がりに下落していきます。
各投資法の成績は以下のとおり。
【一括投資】
評価額6万円/損益-54万円
【定数投資】
評価額12万円/損益-42万円
【定額投資(ドルコスト平均法)】
評価額28.3万円/損益-31.7万円
ドルコスト平均法の損失がいちばん少ないですが、すべての投資法でマイナスリターンとなっています。
一括投資は高値づかみをしており、ドルコスト平均法はナンピン買い(注1)をくり返している状況です。
どのような投資法を使っても、右肩下がりに下落していった場合は、資産の減少から逃げることができません。
ナンピン買い(注1)(またはナンピンがい)は、株式市場でよく使われる投資手法の一つです。この方法は、保有している銘柄の株価が下落した際に、さらに買い増しをして平均購入単価を下げることを指します。具体的には、以下のようなケースでナンピン買いを行います。
1.株価が下がったとき: 例えば、ある銘柄を6,000円で100株購入したとします。その後、株価が5,000円に下がった場合、100株をさらに買い増しすることで、1株当たりの平均購入単価を下げることができます。このようにして、損失を軽減することが目的です。
2.上昇トレンドの中で行う: ナンピン買いは、株価が一時的に下落したときに有利になる可能性が高い投資手法です。ただし、下落トレンドの途中で行うと、損失をさらに大きくするリスクもあります。
*ナンピン買いは慎重に行うべきです。
うまくやらないと損失が増えてしまう危険性があるため、投資経験の浅い方は注意が必要です